バイトしながらいわて旅|ワーク&ステイ PROGRAM

実施レポート

[2024夏]株式会社海楽荘(大船渡温泉)

shuさん

仕事で祭りで、ひととの繋がりを広げて深めて。
大船渡でつながるワーホリを。

shuさん

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滞在期間 2024/8/1~2024/8/16

「岩手」という地域のワーホリに応募しようと思ったきっかけは?
また、「大船渡温泉」を選んだ理由は?

今回、私が大船渡温泉のワーキングホリデーに参加しようと思ったきっかけは、過去に2度、大船渡に訪れたことがあったからでした。しかし、訪れたことがあるといっても、それは観光客としての目線で。
以前にも別の地域でふるさとワーキングホリデーに参加しており、その時の「地域に溶け込むような形でまちに滞在する」という体験が、自分の中でとても有意義なものであったため今回の応募に至りました。

また、岩手の中で大船渡という地域を選んだ理由については先述した通りですが、「大船渡温泉」を選んだのは、私の普段のアルバイトが理由になります。日頃、私はホテルのフロントでアルバイトをしていて、同じ宿泊施設であるということ、そしてそこで培った経験がいつもと違う環境で活かせるのかという挑戦と、こちらで得た経験を糧にしたいとの思いから、こちらを選びました。
ですが、そのような高尚な理由だけではなく、まだ大船渡以北の三陸海岸をちゃんと回ったことないなあという思惑があったのも事実です。

~shuさんのバイトしながらいわて旅~

2024/8/1
ワーキングホリデー初日は移動日としていただき、前乗りしていた仙台から海沿いを北上。
宮城県の志津川、大谷海岸、気仙沼と所々で途中下車しつつ、カジキやカツオといった海産物に舌鼓を打ちながら15時ごろに大船渡温泉へと到着。BRTを降りると、目の前には立派な建物。中へ入ると丁寧にお出迎え頂き、支配人と顔合わせを済ませ、通されたお部屋で一息。
諸々を終えたのちに、社長と夕食をご一緒させていただくことになりました。
お客様にお出しするものと同じもの、ということでしたが、その出てくる料理の量の凄まじいこと凄まじいこと。写真に残しているものはほんのごく一部ですが、あまりの量と豪華さに圧倒。しかもそのうちの何品かは、直接社長が手掛けているものというお話を伺い、さらに感嘆。
そんな社長との会話を楽しんでいたら、あっという間に1時間以上が経っており、明日も早いということで解散。
翌日からの勤務に向けて、夕食と朝食とで異なりますが、まずは自分が実感することで身が引き締まったような思いがします。

2024/8/2
初出勤。
朝5時少し前に厨房に入ると既に数名の方がいらっしゃいました。
この日は同じ年の方にいろいろと教えていただき、基本的に厨房内で動いていました。
冷たい状態で提供する料理と、温かい状態で提供する料理をそれぞれ別で用意しておき、お客様が来られると同時に組み上げて提供する流れに細やかな気配りが見えて、この思いやりをもっと身につけねばと感じました。
休憩中に方言のイントネーションなどの話でひと盛り上がり。
少しずつ打ち解けてきたところで、翌日分の仕込みに。何もわからない状態の私にみなさんが丁寧に教えてくださり、少しずつ覚えてきたところで無事に終了。

この日から三陸・大船渡夏まつりが開催されており、夕方からは旅館屋上より一望できる大船渡湾内で海上パレードが行われていました。

2024/8/3
勤務2日目。
前日が60食後半だったのに対して、この日は80食ほど。少々の忙しさを感じながら、バッシングと洗い場に食器を分けて入れる入れ方を担当しました。
翌日分の仕込みが12時前に終了したので、勤務時間の13時まで、厨房を出て一時的にフロントを担当。
お客様の履き終えたスリッパを丁寧に拭いて並べなおしたり、社長の船が採ってこられたという昆布やわかめにラベル貼りをしたりなど、あっという間に時間が過ぎていきました。

夕方からは、昨日から行われている夏まつりを見に行くために外出。大船渡温泉から1時間弱歩いて大船渡市街へ。
中心部に近づくにつれ人が増え始め、屋台が出ているあたりでは見渡す一面人だらけ。こんな人数どこから来たのだろうかと耳をそばだてていると、この後の花火をお目当てに近隣の陸前高田のみならず、気仙沼や釜石の方面からもやってきているようでした。
踊りも終わり、いよいよ花火の打ち上げ。かなり長いこと打ちあがっていたので、まともな写真を撮れるかなとも思いましたが、生憎三脚を持ってきていなかったのであえなく撃沈。もったいないことをしました。

2024/8/4
勤務3日目。
日曜日ということもあり、120食超とかなり多め。前日までの担当に加え、配膳と洗い終えた食器を回収する取り方を合わせて担当。かなりの種類がある食器の収納位置をしっかりと覚えきれず、何度も手助けをしてもらいながらのお仕事でした。
この日は11時半ごろから宴会の予約が入っており、その準備に慌ただしく、仕込みの合間に兜煮の配膳をお手伝いするなど、イレギュラーな形となりました。

勤務終わりの後は、特に予定も無かったので、車をお借りして碁石海岸と大船渡市立博物館、少し足を伸ばして箱根山展望台へ。
旅館屋上から見える湾内とは表情を一変して、荒く打ち付ける波が形作ったのであろう岩々と、それによって生みだされる重低音を体感しながら、リアスだなあなどと考えていました。

2024/8/5
勤務4日目。週末を終えた月曜日。
80食と少しでしたが、特に危うい場面もなくするっと終了。慣れてきたのもあって、自然と体が動くようになってきました。
昼休憩では、夏の忙しい時期だけお手伝いに来ていた方とお話ししていたところ、ちょうど私が現在進行形で調査している事柄に興味があることが判明。いろいろとお話を聞かせていただけることが出来ました。

夜、支配人と合流して、市街地のお店で中華料理をいただきました。地域のブランド品である干し貝柱を地元の方々にも食べて知ってもらおうというプロジェクトのさなかだったようで、それに関するあれこれから、支配人ご自身の来歴の話に至るまで、幅広いお話を伺いました。その途中で「とよまるや」の店主さんとも合流し、お店を変え再びおはなし。
マスターも含めて大船渡、ひいてはこの辺り一帯の呼び名である気仙地方の金の歴史やドライブに良いエリアを伺うなど、楽しい時間を過ごしました。タッコンハッピーボーイ。

2024/8/6
この日はお休みをいただいていましたが、別件でWEB会議があり夕方までほぼ缶詰。それが終わったタイミングで盛町灯ろう七夕まつりに連れて行っていただきました。
先日の夏まつりに負けず劣らず、七夕飾りで彩られた通りを埋め尽くすほどの人通りで、すごい熱気。
お誘いいただいたNさんと別れて、端から端までカメラを持って歩いていると、旅館のKさんや前日にお話ししたお店のマスターなど、短時間で様々な方とお会いして、人の距離が近いと実感しました。

プログラムの終了後、山車の格納のお手伝い。
道中には坂や切り返しが必要な個所などがあり少々大変でしたが、なかなかない経験が出来ました。

2024/8/7
この日もお休みで予定はなし。朝から車をお借りして、今まで行けていなかった宮古、釜石方面へ。
トンネルを抜けて視界が開ける度に、右手に穏やかな青い海と立派な防潮堤が見える三陸道を走りながら、宮古で浄土ヶ浜、田老で防潮堤とたろう観光ホテルの震災遺構を見つつ、小本へと北上し、岩泉へ。かつての駅前で、まだ食べていなかった冷麺をいただき、岩泉と言えばの龍泉洞に。中はひんやりどころかもはや寒いぐらいで、外に出てからカメラのレンズの曇りがなかなか引かず難儀しました。

峠を越えて宮古へと戻り、その足で釜石に寄り道。大船渡へは17時半頃に戻りました。この日も七夕まつりのお手伝いをする予定で、そのために随分と駆け足の観光となってしまいましたが、行きたいスポットは大方回れたので満足です。

改めて盛に向かうと、参加される地区の皆さんが代表の方の家に集まっていらしたので、一度お邪魔させていただき、その後時間になったので「よおよいどお」の掛け声で山車を牽きはじめ。市街地の商店街といった趣きの通りなので、山車同士がすれ違うのも一苦労。連携を取って抜けながら、一往復して元の位置まで戻ります。沿道にも多くの見物客の方がいらっしゃいましたし、道中何人もの方から声を掛けられて、地域密着型の昔からのお祭りならではの良さがあるなあとしみじみ感じました。

昨日よろしく山車を格納した後は、公民館で打ち上げ。地区の方は勿論、太平洋セメントの社員さんや、私と同じく関西の大学から来られた方。さらには大船渡温泉を設計された建築士の方や、アメリカから毎年ボランティアに来ているというグループなど、大船渡という地域に様々な方が集まっているのが非常に印象的でした。
色々とお話をしていると時間はあっという間に過ぎていき、気が付けば23時を回っていて解散の流れに。昨日からお世話になっているNさんと共に支配人の到着を待つ間、私が大学で行っている地域おこし協力隊の調査について様々な意見をいただき、非常に有意義な待ち時間となりました。

2024/8/8
勤務5日目。
二日ぶりの厨房でしたが、体は忘れることなくちゃんと覚えていました。
連泊の場合、朝食は日ごとに異なる中身を提供するのですが、通常の提供分もある中、いかに素早く内容を間違えずに組み上げるかという点も大事になってきます。そのような連泊分のお食事を、外国人のご家族の方に提供する機会がありましたが、昨日の分とはお魚が違うなどと軽く世間話をする程度の余裕もありました。

2024/8/9
勤務6日目。
だんだんとお盆に向けて宿泊者数が増えていく中、おおよそ100食手前。ですが、体感ではそこまで忙しくなく、特に問題も起きずにさらっと朝食時間は終了。慣れを感じます。
休憩時間では黒糖のプリンやとうもろこしなどをいただき、午後にあったWEB会議の合間のいい休憩になりました。

2024/8/10
勤務7日目。
昼前に宴会が控えている中、100食を少し超えるぐらいの忙しさ。宴会の準備と提供に人数を割くために、翌日分の仕込みがなかなか終わらず、13時を少し超えての終了となりました。

午後からは再び車をお借りし、大船渡市内をぐるっと一周。
ホタテの獲れる綾里や越喜来、石灰岩を採石している日頃市など、滞在中に聞いた話の中に出てきた地域を重点的に巡り、「大船渡」というまち全体の解像度が上がったような気がします。

20時半からは、大船渡温泉でのイベントとして「たらじがね」の実演イベントが。秋田のなまはげに似た見た目で、先ほどの越喜来の崎浜地区に伝わる風習だとか。たらじがねの落とした藁はお守りになるようで、いまも財布の中に入っています。

2024/8/11
この日は一日お休みでしたが、太平洋沖を北上してきた台風5号が接近していて朝から強い風。
外に出るのも躊躇するような状況で、一日部屋に籠って過ごすひどくもったいない日となってしまいました。

2024/8/12
勤務8日目。
世間一般はお盆シーズンに、大船渡は台風の暴風域に突入。
食数は120で、私が担当した中では一番の多さでした。しかし、その分勤務されている方も多く、そこまで極端な忙しさにはならずに過ぎていきました。そんな中、いっとう風が吹き荒れていて、窓から見える外の木々が大暴れしていたタイミングで、丁度台風が上陸していたようで、報道を見る限り、東北の太平洋側からの上陸は3例目とのこと。すごいところに居合わせてしまったようです。

休憩後、厨房での勤務は終了。これより、初めに希望していたフロントでの業務へ異動になりました。
以前も体験したスリッパ拭きに始まり、帯を畳んだりカードキー入れを折ったりと、細かい業務をこなしつつ、溜まったスリッパを拭くというループ。その最中に、見知ったとある地域の店舗の紙袋を持ったお客様がいらしたので、挨拶に加えてお声を掛けたところ会話が弾み、その後お客様が出発される際に改めてご挨拶を頂きました。久しぶりのこの感覚に、2週間ほど休暇に入っていたフロント対応の脳細胞が帰って来たように思えるのが不思議なものです。

2024/8/13
勤務9日目。
台風は過ぎ去ったものの、朝からどんよりとした霧が見渡す限り続いていました。
昨日よりフロントへと移ったため、勤務時間も変更。ついつい早く目が覚めてしまい時間を持て余してしまい、妙に馴れない心持ちでした。

9時前にフロントへ向かうと、立て続けにチェックアウトのお客様をお見送り。玄関先まで出て建物をバックにお写真を撮ったり、お辞儀をしてお見送りをしたり、普段のアルバイト先では、基本することのない流れが非常に新鮮でした。こういった部分は、流石旅館だなあと思うばかりです。

スリッパ拭き、カードキー入れ折りをループしつつ、館内売店の商品の袋詰めに、発送伝票のお手伝い。日帰り入浴の時間になると、お客様の導線の誘導とチケットの受け取り。チェックインの開始時刻になれば、来館したお客様のお名前確認と荷預かり。こちらは普段の業務で馴れたものですが、しかしここは旅館、チェックインが混みあってくると、腰を掛けられる場所まで案内してお待ちいただきます。先ほどのお見送りもそうですが、ビジネスホテルではこうはいきません。お客様本位のおもてなしという在り方の一端が学べたように感じます。

2024/8/14
勤務最終日、10日目。
昨日よろしく目が覚めてしまったため、屋上から日の出を見に行きました。この景色が見られるのもあと2日。贅沢な景色を一人で堪能しました。

前日と同じ流れをこなす中、この日は社長の同級生会があり、昼時に60名の宴会がありました。料理の配膳を手伝い、時間が近づくにつれ、続々と集まる参加者を団体用の靴箱から会場へと誘導。追加の料理を配膳し、フロントへ戻れば束の間の静寂。お見送りの際にはフロント総出で玄関に立ち、送迎の車が完全に見えなくなるまで1分以上お手振り。こういったところが観光客から、そして地元からも愛される所以なのだと思いました。

夜、事務局の方が大船渡温泉に立ち寄るとのことで待機。ここで初めて顔合わせでした。
この日も20時半からたらじがねのイベントがあり、事務局の方とご一緒して再び見学。その後、七夕まつりのNさんも交えて10分程度近況報告含め色々とお話。翌日の交流会について確認した後、解散しました。

2024/8/15
最後のお休み。
前述の通り、事務局の方と、ワーホリのタイミングが被っていた陸前高田のM.Tさんと一日交流会。
合流まで時間があったので、のんびり海沿いを歩いて大船渡市魚市場へ。お盆期間なので休場でしたが、資料室は開いており、獲れる魚介から市場のシステムまで幅広く学べるようになっていました。また、一角にはアワビの貝殻が置かれており、ご自由にお持ちくださいとのことだったのでいくつか頂戴。いまはデスクの一角で各地の民芸品の中に紛れています。

盛に向かうBRTの車内で合流し、大船渡温泉へ来る方はみんながみんな行くという、The Burger Heartsでシカのジビエのバーガーを頂いて、地元大船渡の観光会社・岩手開発産業株式会社にいらっしゃるNさんの事務所へ移動。まちのこと、ひとのこと、それらが繋がって……。いくらかのお話は七夕まつりの時や支配人から伺っていましたが、それを加味しても余りあるほどのお話を聞かせていただきました。

Nさんに見送られて、大船渡市街のキャッセン大船渡へ移動。ここでは「あの日」というスマートフォンを使って実際に歩きながら行う防災体験型のアドベンチャーゲームを体験。事務局の方の画面で避難の時に”正しい”と思う選択肢を、私の画面では、人道的に”正しい”と思う選択肢を選びながら、目的地、かつ避難場所である加茂神社へ。すべての中身を詳らかにはしませんが、事務局の方の画面では無事に避難。私の画面では避難途中に呑まれてしまいました。いったいこの場合の“正しい”って何なんでしょうかね。そう思わせてくれるゲームでした。

最後に私の希望で「とよまるや」へ。サンマラーメンを頂き、店主さんにもご挨拶をし、両名ともBRTで別れ大船渡温泉へと戻ります。が、この日も行われていたたらじがねの準備でNさんと再会。話の流れで、支配人とたらじがねの中の人達も含めてとよまるやへ逆戻り。越喜来の漁師の方々と、そこに北海道から来たという方との話が弾み、結局日付が変わるまでとよまるやにはお世話になってしまいました。

2024/8/16
本当に最終日。
朝、朝食開始前の人がいないタイミングがあったのでフロントからの眺めを一枚。本当に毎日様子の変わる海を見ていただけあって、普段海に縁のない人間にとっては不思議な感覚でした。

朝食スタッフの方、フロントスタッフの方皆様に挨拶を済ませ、荷物をまとめてチェックアウト。BRTの停留所に向かうまで、フロントのKさんと支配人が見えなくなるまで手を振ってくださり、ああまた来ようと強く思いました。
最後、下の方から振り返って見た大船渡温泉の建物は、最初に見た時に比べ、より立派に、より力強く感じたような気がします。

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