バイトしながらいわて旅|ワーク&ステイ PROGRAM

実施レポート

[2025夏]株式会社遠野ふるさと商社(遠野ふるさと村)

ミサキさん

わたしの「ふるさと」、遠野―少しの未練で、たのしかったを手繰れるように

ミサキさん

ミサキさん

滞在期間 2025/8/10~2025/8/16

「岩手」という地域のワーホリに応募しようと思ったきっかけは?
また、「遠野ふるさと村」を選んだ理由は?

関西出身の私にとって、岩手という地はほど遠く、旅の目的地に入ることがなかったからこそである。
東北というと、飛行機で行くか、新幹線で行くか。しかし、いざ北に上っていくとなると、北海道に行けば良いのではと思ってしまう。実際、このワーホリを見つけるまで、お盆シーズンは船で北海道に行こうか、と考えていた。
しかし、自ら進んで行かない場所、想像にもない場所にこそ、自分の脳内に無かったような発見があるというものであることも、私は知っている。一人旅を趣味としている私は、よく地域をランダムで選んでくれるアプリを使って、適当な地域に行っている。全て後悔はない、むしろ満ち足りた旅だった。
古本屋で、知りもしない作家の本を手に取るように、「岩手」という、一番遠い場所を手繰り寄せた。

「遠野ふるさと村」を選んだのは、のどかな場所が好き、という単純な理由からである。
南部曲り家や豊かな自然の元で、目一杯昔の暮らしを体感できるというのは、都会ではそうそう得られない経験である。土地を奪い合うようにあらゆるマーケットがひしめき合う都市の中で、本来ののどかさは手に入りにくい。出身が兵庫県神戸市という政令指定都市であり、大学生になって京都府京都市という観光・インバウンドの中心地に住む私にとって、“村”での暮らしは想像できないものであり、憧れであり──そこに来る人々に、来てよかったと思わせるサービスを提供したい、と考えた。

受入先でのお仕事はいかがでしたか?

仕事内容としては大まかに分けて三個。
ビジターセンター風樹舎(ふるさと村の玄関)での受付業務・売店でのレジ打ち、こびるの家(喫茶・軽食店)での接客対応、ふるさと村のSNS運用である。その他にも受入先の方のご厚意で、様々な仕事をさせていただいた。
その中から、印象に残るエピソードをいくつかご紹介したい。(下にある日報で、より詳しく書いていこうと思う)

◎懐かしの……魚つかみ体験
初日、出勤してすぐの午前は魚つかみ体験の補助をした。昨今はニジマスをつかむことが多いらしいが、ふるさと村での魚つかみ体験は、遠野産のヤマメを、遠野産の炭で焼くという贅沢ぶり!
子どもたちとわあきゃあ言いながら魚を探すと、昔に戻ったような感覚に陥った。

◎バケツジンギスカンを実食♪
ご家庭に一台あるらしいバケツジンギスカン。(関西でいうたこ焼き器的なモンっちゅうことやな)バケツの中で火を焚いて、上に鉄板を乗せてジンギスカンと野菜を焼く。今焼いたラム肉と、その肉汁が染み込んだシャキシャキのお野菜が、簡単に食べられるとは……。これが遠野のご家庭の味とは、幸せ極まりないのだろう。

◎こびるの家店主が作る最高のこだわりメニュー!
軽食を提供するこびるの家では、コーヒーなどの基本メニューから、東北のお菓子であるゆべし、地元の方が作ったブルーベリーソースを乗せた濃厚チーズケーキ、ふわふわかき氷、遠野の素材を使ったカレー……軽食と思えぬ魅力的なメニューが勢ぞろい。そのこだわりは印象に残っている。

お休みはどのように過ごしましたか?

休日は一日のみであったが、出勤前・退勤後の時間を使って色々な場所へ行ったり、そもそも宿自体が面白かったりなど、面白いホリデーが過ごせた。

印象に残っているのは、休日に訪れた陸前高田でのサイクリングだ。受入先の方がツアーコンダクターをされていて、その方に導かれて、コースを巡った。
一日お休みだったので、午前はゆっくりと宿で過ごした。朝ご飯を食べて、持ってきた本を読んで、少しパソコンを開いて日記的なものを書く。その後午後からサイクリングはスタートした。
東日本大震災で津波に呑まれた地域。その爪痕は、外からでは見えないほど、暮らしの中にまで深刻に刻まれていた。奇跡の一本松や高田松原の再生、津波到達点に植えられていっている桜、そこかしこに立てらている避難所への看板……。ただ、そこからの再生や、たしかに希望に満ち溢れている人々の生活を垣間見た。

グルメで言えば、道の駅高田松原で食べた海鮮丼!ぷりっぷりの大振りのホタテやとろとろメカブ、ぷちぷちイクラで幸せだった。また、サイクリング終わりに立ち寄った「発酵パーク CAMOCY」の中のベーカリー MAaLoで食べたパン。レモンのパンを食べたが、さっぱりした味わいがサイクリング後の身体に染みわたって美味しかった。
岩手はほんとうに、恵まれた環境でおいしいものが大量にある地なのだと実感した。

~ミサキさんのバイトしながらいわて旅~

最初は(私の計画性の無さから)どうなることかと思ったが、実際始まってみると川の水が整然と流れるように事が進んだ。今京都に帰ってからも、周囲に楽しかった、と言い回るほどには印象に残る旅ができた。

ただ岩手を訪れるだけでなく、バイトしながら滞在することで、現地で働く人たちの声や想いを聞くことができる。生まれも育ちも遠野という人から、ふとした瞬間に遠野に魅了されて移住した人々。私と同じように、兵庫県神戸市で生まれ育ち、遠野で職人をしている方の弟子になり、伝統産業を継承している方も居た。それぞれ違う遠野の魅力を生活の中で見つけ、それを快く教えていただける環境というのは、ただ一人で旅をするだけでは得られない知見だったと思う。

また、遠野に旅行に来た方とも密接に関わることができた。旅行客から見た私は、遠野ふるさと村で働く一スタッフ──つまりは岩手在住の人──ということになる。だからこそ、遠野が好きになりました、という声が聞ける。今日はどちらからお越しに、という質問も聞けたし、東北の外から来ている人も多くみられたのが面白かった。
それに、私にとって面白かったのは、縁が繋がった旅だった、ということである。
私は小説を書いているのだが、受入先に編集者の方がいらっしゃったり、岩手に来て早々、『遠野怪談』の作者・小田切大輝さんの怪談を聞けたり、そもそも遠野自体、柳田国男『遠野物語』の舞台であったり……。そういった、あらゆる物語が繋がり合った旅であった、と思った。

2025/08/09

滞在1日目

インターンシップが大阪であったので、8日に大阪はなんばから夜行バスで出発し、9日の朝に東京は池袋に到着。そこから東北新幹線で新花巻駅へ向かう。
新幹線駅ではなかったのか、と錯覚するほど、なにもない。けれど、その何も無さが、宮沢賢治の世界観を引き立てていた。
駅の見た目は、銀河鉄道の発車駅をモチーフにしているらしい。言われてみれば、銀河へ向かう列車が発着しそうな雰囲気がある。

新花巻駅・駅舎。
広場にも、賢治に関連した意匠が散らばっていた。

銀河プラザ。
「この辺りのお店はここだけ」というようなことが書かれていた気がする。

辺りを見渡しても、駐車場とレンタカー屋さん、ほかには彼方まで広がる草原が続いているのみだった。
唯一あった二階建ての建物に人が向かっていたので、私も行ってみることにした。
一階にはお土産屋さん、二階にはご飯屋さんがあるようで、ちょうどご飯屋さんを探していた私は、導かれるように入っていく。新花巻駅には12時着、そこから遠野駅に向かう電車は14時発だったから、時間も十分あった。

階段踊り場。
「どなたもどうかお食べください。」


「山猫軒」と銘打たれたお店。由来は言わずもがなだろう。
いろいろメニューがあって迷ったが、一番それらしい、山猫定食を頼む。
そういえば、岩手といえばの食べ物はなにだろう。わんこそばは一番頭に浮かぶけれど、海岸の方に行ったら海鮮とか有名なのかな。あと、ひっつみ汁、というのが美味しいらしい、と、プログラム前の面談で聞いたな。

山猫定食には、ひっつみ汁もついてくるらしい。さて、どんな味だろう……?

見たら分かるおいしい奴やん!

食欲がスタートラインに来るギリギリで写真を撮って、手を合わせて、食べ始める。
左下、白色のお漬物の下にある丼を開けると、中にあるのはつやっつやの白米。漬物と一緒に食べる。美味しい。
メインの角煮を食べてみる。白金豚(はっきんとん)という品種らしい、脂身が良いアクセントになって、けれど身はひきしまっていて、美味しい。
ひっつみ汁を飲んでみる。はんぺんみたいな見た目のおもちが入っていて、素朴な美味しさ。おもちを伸ばすのを、ひっつむ、と言うらしい。ひっつまれたことで過度なもちもち感がなく、ちゅるんと食べれて、かなり美味しい。
他の漬物や天ぷらも、すべて美味しかった。岩手に来てよかったと思った。実感早いか。
すべて食べ終わってスイカをしゃくりと食べると、夏の訪れを感じた。

新花巻駅に戻って、出発まであと1時間あったが、もう釜石線の待合で待とうかと思い、ホームへ向かった。新幹線駅とは少し離れているらしい。「ここから先は売店ありません」と書かれている、その先へ向かう。
階段を下って上がると、すぐにワンマン電車のホームだ……と分かる。Suicaは使えるらしいがICOCAは使えないようで、関東を感じながら、久々に切符を買った。

新花巻↔遠野駅間の切符。
切符って、もうずいぶんエモいものになったよね。

クーラーが絶妙に効く待合室で、柳田国男『遠野物語』を読んでいたら、すぐに時間が来てしまっていた。ワンマン電車は幸運なことに下宿先の最寄りと同じだったから、乗り方はすぐに分かった。

すさまじくうつくしい線路。
うつくしいのでデカいサイズでお見せします。

遠野駅に着いた。新花巻駅よりも栄えていて困惑した。新幹線駅より栄えている駅(しかも、新花巻駅から一時間ほどかかる!)って、どういうことなのだろう……?

遠野駅の看板。子どもたちがかわいい。
「フォルクローロ」はエスペラント語で「民話」。

遠野駅の前には、観光協会があった。タクシーロータリーもあったし、店らしき建物が連なる風景が、ずっと続いていた。
観光協会でなにかすぐに食べられたり飲めたりできるものを買おうと思って、山ぶどうジュースを買った。岩手産の山ぶどうを使っているらしい。

完熟山のきぶどう。
酸味と甘みがダイレクトに来て、しゃきっと目が覚めた。

内田書店。
一度通り過ぎてしまったほどに溶けこんでいた。

受入先の方が17時に来てくださるとのことなので、2時間ほど暇が生まれた。この辺りを歩き廻ってみようと、まず紹介していただいていた博物館へ行こうとするが、しっかり見るための時間が取れないと気づき、Googleマップを見ずに歩き廻ってみることにした。

ふらーっと歩き廻っていると、「内田書店」を見つけた。古民家を再生したかのような、なつかしさを残す書店。教科書なども取り扱っているらしい。後で調べたが、この辺りのショッピングモールにも店舗はあるようで、けれど、この辺りで唯一の書店だった。
中には遠野関連の書籍はもちろん、話題書は一通り押さえられていた。
一番印象に残っているのは、子ども向けの書籍がずらりと並べられていたこと。読書感想文に選ばれそうな本から、これは、と思う本まで揃っている。特にそういった子ども向けの本のラインナップに、店主の選書センスが光っているような気がした。

受入先の方にふるさと村まで送っていただいた。というのも、今日は怪談を聞くイベントが夜にあるらしく、ご厚意で聞かせていただくことになった。

夜の遠野ふるさと村はものものしい雰囲気に包まれる……。

小田切大輝さん語る怪談は、すべて人に聞いたお話が元となっている。舞台は遠野だったりそうでなかったりとマチマチだ。特筆すべきは、観客が聞きたいお話を聞かせてくれることだろう。例えば「トンネル」「猫」「病院」など……、言ったことに応じて、話を考えてくれるのだ。

その後は肝試し。お話の会場になった川越別邸からひとつ上にある旧菊池家住宅(通称:大野どん)まで、提灯を頼りに歩く。そして大野どんは肝試し会場になっていて、入っていく人入っていく人、きゃあ、と声があがり、中からドダドダドダ……と足音が聞こえる。夏の夜にふさわしい、肝が冷える一夜だった。

大野どんと提灯。
歩く時は、この提灯の灯りを頼って歩くことになる。

2025/08/10

滞在2日目

今日は初出勤。宿であるたかむろ水光園からは自転車でふるさと村へ向かう、という話をしていたが、朝から不安定な雨で、ふるさと村の方に迎えに来ていただいた。
最初の仕事は、魚掴み体験の補助。子どもたちと川に入って、きゃいきゃい魚を取って、内臓を取って、焼いた。昔は魚掴み体験をする側だったけれど、この年になって、指導側になるというのは感慨深いものがある。

串刺しした魚。
この串は冬季にふるさと村の方がせっせと削り出しているらしい。

焼き場の風景。
炭は遠野産の木炭であり、おさかなも遠野産のヤマメである。

焼き上がり。
お昼に近づくにつれて、香ばしい匂いが漂ってくる。

その後は、ふるさと村を散策させていただいた。まず、自然が素晴らしく、どこに行っても空気が澄み切っている。夏のはずなのに、それを思わせないほどの涼しい風が通る。
ビジターセンター「風樹舎」を出ると、まず森へ入っていく。道なりに進んでいくと草原に出て、左側に曲り家があり、右側にはどこまでも続きそうな緑が続いている。中央には上へと続くゆるやかな上り坂がある。順路はなんとなくはあるけれど、厳密には決まっていない。どこへ行っても構わない、草原の中でただ突っ立っていたって構わない、かつての里山での自由な暮らしというのは、きっとこういうものだったのだろう。私たちは、ただ生活をすればよい。

生い茂る草。
これだけ無造作に生えているのに、うつくしく見えるのは不思議だ。


ふるさと村には黒色のコイが無数に集まるコイ池があるが、それとは違う静謐な池だ。

ふるさと村には多くの曲り家が保存されていて、その内装や間取りに、家ごとの特異性が見える。高貴な家と、単純な農家の家、などの違いが出ていて、そういうのを見るだけでも面白い。ほかにも、単純に休憩がてら座り込んだり、寝転んでみたり。外の景色を眺めてみたり、縁側に座ってみたり。オタ活もじゅうぶんにできるだろう、と思う。そこまで人が居ないからこその楽しみがある。私も再訪するときにはぬいを持ってこようと思う。

いろりと緑と。
しばらく座り込んだが、外からの光にかすかに照らされて、居心地が良かった。


昔の器具と外と。
この外とのコントラストがすてきだ。

そうして遊んだりゆったりしたりしていると、ふるさと村の人に言われていた時間になる。お昼ご飯は楽しみにしててね、と言われていたので、足取り軽くビジターセンターに向かうと、バケツジンギスカンの用意がされていた。
バケツと鉄板、火起こしの道具や具材を持って、車でこびるの家へ上がる。慣れた手つきで用意してくださったコンロ。バケツの中で火を起こして、その上に鉄板を乗せる。

バケツジンギスカン。
焼肉形式で焼いていく。野菜もラム肉ももりもり。


ラムを上で焼き、野菜を下で焼くことで、脂が下に落ちて野菜に味がつく。ラムはやさしい口当たりながら焼き立ての香ばしさもあって美味しい。それに、野菜にも焦げ目がついて、美味しさを倍増させる。これを外でやっている、というのも、さらに美味しさを引き立てる。後述するが、こびるの家から南を臨んだ景色は、ほんとうに最高なのだ。柔らかですこしあたたかい風を受けて、良い景色を見ながら食べる、というのは、味としても経験としても貴重なお味だった。

宿に帰ると、今日明日の宿はここだよ、と案内された。

ここ。

ちがう。ここの中の一室、とか、そういう生ぬるい話ではない。ここぜんぶ私の部屋。いやおうち。ここ一棟貸。

「南部曲り家」と呼ばれるこの家の構造は、曲がっているから曲り家、なのだけれど(ちなみにまっすぐなのは直家(すぐや)という)、この遠野の曲り家、ひいてはふるさと村にある曲り家には特徴がある。短い方の空間には、馬など家畜が住む、という特徴だ。家畜と人が一緒に暮らす、というのが特徴。なので玄関に入ってすぐに、家畜小屋がお出ましする。
宿泊施設であるたかむろ水光園自体は曲り家ではなく単純にホテルの建物で、そこからの連絡通路を通ってこの家の土間へと着く。この家は少し下に位置しているため、60段ほどの階段を上り下りしながら生活することになる。少し疲れたものの、非日常感が上回ってワクワクしていた。

土間。
最新のケトルやリモコンがどこか不調和であり、安心感でもあり……。

玄関。
右側が家畜小屋になっている。スリッパの多さがこの家が元々何人宿泊を想定していたかを思わせる……。


歩いてみるとギシギシしたり、独特の匂いがするし、家の中に神棚があるし、なにより広い。一人で四間は使えないなあと、大広間と茶室の襖をしめて二間で生活する。それでも広いけれど。一間完全にふとんだけのスペースになっているけれど。
ただ、ここにはWi-Fiも繋がらないし、人の気配もない。聞こえるのは自然の音と、風に吹かれて床や壁が軋む音だけ。ひさしぶりに、ゆっくり生活ができそうだと、座布団に腰を下ろした。

ふとんだけの空間。
来て早々に布団に飛び込んだのですごく乱れている……。

2025/08/11

滞在3日目

朝に晴れるのははじめてで、勢いよく自転車を転がしてようやく行けた!

伝承園!の入り口

遠野物語を知るなら博物館かここ、と言われていて、ずっと気になっていた伝承園に、出勤前に行ってみた。伝承園に行くなら出勤時間をずらすよ、と言っていただき、元々10時出勤だったところを10時半にズラしていただいた。
開いたばかりの伝承園にはそこまで人がおらず、ゆったりと見ることができる。古民家を利用した展示スペースもあり、展示の内容はもちろん、場所の雰囲気からも、遠野という地にのめりこめた。

写真スペース。
遠野に来ました。

水車小屋。
ただパネルでの展示だけでなく、こういったオブジェクトもあり、のめりこめる。

柳田国男『遠野物語』は民話であり、ヤマもオチもない物語がとてつもない数展開されるが、それらは柳田国男が佐々木喜善から聞いた物語である。その佐々木喜善の記念館もあり、『遠野物語』自体の世界観理解はもちろんのこと、著者についても理解が深まった。

佐々木喜善記念館。
入ってすぐ右に、自然に囲まれてぽつんとある。

こびるの家メニュー。
私のおすすめはゆべし(くるみ入りの餅菓子)♪


見学が終わった後は、遠野ふるさと村へ。
自転車で行くと結構疲れるし、山道なので息があがる。ただ、なにもない、だれもいない道が多いからこそ、そういうところでは歌を歌いながら自転車を漕げる、という点が魅力的だった。「なつがはじまーった、あいずがしたー」と、息が上がりながら口ずさむと、空の青が夏の青に変わった気がした。
ふるさと村では、「こびるの家」にて、接客業務を行った。こびる、とは、「おやつ」の意。軽食を提供する役割を担うこの家で、オーダーをとる。飲食バイトを経て接客バイトを二年ほどしているので、その経験が生きる瞬間だった。レジに来る人々からは、穏やかさと落ち着きを感じる。レジに立っていても、ふうと心が安らぐ時間を過ごせた。

店主の方にご厚意で作っていただいたアイスカフェオレ。
ブレンドも工夫されていて、とてもおいしい!

ピークが過ぎてお客さんの流れも落ち着いてきたので、こびるの家の上にある弥十郎どんにて、馬に会いに行くことにした。
弥十郎どんは、ふるさと村で一番高い場所に位置する曲り家で、しらゆき、という名前の馬がいるらしいが……。

しらゆき。ご長寿の白馬馬。

居た!暑くなければ放牧されていることもあるのだが、今日は暑いから中に居た。人懐っこく、触れ合っていると時間がなくなりそうだ。縁側からしらゆきを見ていると、のんびり時間が過ぎていく。
こびるの家に戻って、また縁側で安らぐ。前にも言ったが、こびるの家の縁側から見る景色はほんとうに良い……。この場所でもろもろ飲んだり食べたりしたら、とてもこころやすらぐ時間を過ごせるだろう。風も通るし。

こびるの家・縁側から臨む景色。
気に入りすぎて、期間中なんども見てしまった。

業務が終わった後自転車で帰っていると、もう少し走りたいなあ、と言う気持ちが湧いてくる。というのも、周囲の景色が良すぎたからだ。

遠野ふるさと村↔たかむろ水光園道中の景色。
朝はまた違う顔を見せる。
どこというのは難しいが、個人的フォトスポット。

そうだ、道の駅に行こう。
道の駅遠野風の丘は、ここから走って1時間ほど。閉店30分前には着けそうだし、行ってみよう、と、道を調べて、いつもは左へ曲がる交差点を右に曲がった。

市街地から離れると、ほんとうになにもなくなるのだ、遠野は、と、この日悟った。市街地を突っ切って風の丘方面に行くと、山道が顔を見せる。もしかしたら新花巻駅は、この逆だったのかもしれない……。一時間自転車を漕いだ足は、風の丘に入るためのスロープ的な坂でノックアウトされた。

道の駅遠野風の丘。
駐車場も広く、外には屋台もあった。

多田自然農場さんのマンゴージェラート。
疲れた体に染みわたった。


冷たいものが食べたいな、とよろよろ入っていくと、ジェラート屋さんがあったので、マンゴージェラートをいただくことにした。
道の駅遠野風の丘は、お土産はもちろん、フードホールには地元のお店が多く、思いっきり遠野を体感できる場所であった。お手洗いなんかも綺麗だし、インフォメーションセンターも分かりやすい位置にあったりして、基本的な機能を高水準で抑えつつも、楽しむ場所としての道の駅も確立させていて、これは人気が出るわけだ、と感じた。

帰ってみると、もう19時になっていた。たかむろ水光園まではとてつもない坂がある。分度器で45度の線を描いたときのような。ボールを転がしたら五秒ですっとんでいきそうな坂が。
宿で出していただいたカレーとお水が、普段よりも明らかに美味しく感じた。

2025/08/12

滞在4日目

かき氷、はじめました。

私が接客業務に慣れてきた、とのことで、どうしても時間がかかってしまうかき氷を、はじめました! 元々こびるの家は店主さんのワンオペで営業されているため、私が居たからこそだったのかもしれません。
かき氷に誘われてか、多くのお客さんがご来店くださいました。

かき氷のメニュー表。
いちごミルク、抹茶ミルク、梅シロップの三種類。


こびるの家のかき氷は、ほんとうにおいしい。一口食べて感動したくらいおいしい。まず食感がふわふわで、口に入れた瞬間溶けていく。すぐに食べないと、気づけば全部溶けてしまいそうな儚さ。そして中には大量のシロップが入っていて、氷だけで食べるという局面が極端に少なく、最後まで味を楽しめるかき氷!
ジェラートは遠野で作られている、店主一押しのお店のモノを使用しており、こちらもすっごく美味しい!夏にぴったりの逸品だった。

歩いている時に放牧されていたしらゆきを発見。
今日はまだ涼しいものね。


こびるの家が落ち着いたので、今日はビジターセンターでの受付業務をさせていただくことにした。ビジターセンターへ下りていくときにも、当然だがふるさと村の敷地を通る。こののどかな場所を歩いている時も業務中だとは、この仕事は良い仕事だなあ、と思ったり。

ビジターセンターでは、ふるさと村にいらっしゃった方の入園料をいただいたり、お土産の会計をしたりした。飲食経験があるとはいえ、どちらかというと小売経験の方が長いから、こちらの業務は手に馴染む。ただ、ドラックストアで働いている時よりも、ものを丁寧に扱ったり、ふるさと村に来たことを後悔させないように、普段より丁寧に、しかし温かく言葉を使うことを意識した。ドラックストアでも丁寧に、と思っていたが、ここでは人の温かみを前面に押し出した接客をした。そういう変化は、普段言葉を扱っているからなのか、それとも接客をしているからなのか、と思う。

計量も袋詰めも、すべて手仕事!
何気なくあげているその餌を詰めたのは人間なのだ。


暇な時には、鯉の餌をふくろにつめていった。

受付業務を終えた後、ご厚意で鯉の餌やりをさせていただくことになった。「すっげえキモイ!」と言われていた通り、黒色の鯉が迫って来る光景はとてつもなくキモかった。餌をぴたーんと投げると、びちゃびちゃびちゃぁ!と迫ってきて、ぱちん、ぱちんと互いの身を叩き合わせながら食べていく。この光景を一言で言い表すなら、まあキモイだろう……。

鯉池。口が大きい、身も大きい。

ふるさと村で鯉に餌をあげられる場所は二つあるが、入って森を抜けて右へ行ったところで見える、橋の上から餌が投げられるスポットがおすすめだ。

たかむろ水光園に帰っている時に、ふと、景色に既視感を覚えた。
眼科で見せられる気球のある景色だなこれ……。なんだか、走っているとだんだん目が良くなってくる気がしてくる。

ふるさと村↔たかむろ水光園。
この景色が3キロくらい続く。

たかむろ水光園までの坂は、初日は途中で休んでしまったけれど、この日は登り切れた(ぜえはあしながら)。

さて夜ご飯を食べようと食堂に行くと……。
え⁉刺身⁉海鮮好きな私にとっては、このご飯は想定外だった。すべて脂がのっていて、あまりにも美味しい。これはたまらない!明日はお休みをいただいて陸前高田へ行く日だが、その前に海鮮を食べられるとは……。僥倖、生きていて良かった……。染みわたるご飯だった。

2025/08/13

滞在4日目

今日はお休みをいただいて、ふるさと村の方と共に陸前高田へ行く日。朝はゆっくりしたいです!と伝え、11時半にお迎えに来ていただくことに。とはいえ朝食はあるのでゆっくりめに食べて、これまでに買った本を読んだり、身辺整理をしたりする。

陸前高田まで車で行き、道の駅高田松原でとまる。事前になにか食べたいものやリクエストはあるか、と聞かれたときに、「海鮮が食べたいです!」と言った。「ここの海鮮丼は美味しい」、と教えていただき、出てきたのがこちら。

たかたのごはんから「リアス丼」

これは美味しいやつ!! ホタテでっか!! いくらつぶつぶ!!
ホタテはぷりぷりで、いくらは口に入れた瞬間に弾けるし、めかぶはとろっとろでかなりおいしかったです。付け合わせのひじきと味噌汁も、ごはんに合っておいしかった……。

そして食後にはジェラート。

私はストロベリーとブルーベリー&レアチーズをセレクト。濃厚で果実をそのまま食べているようで、すごくおいしかった。夏の暑さに見合うさっぱりさで、夏の暑さが吹き飛ぶ逸品!今まで食べたジェラートの中で、間違いなく一番おいしかった。オススメ!

その後、道の駅高田松原に併設された東日本大震災津波伝承館へ。

東日本大震災が起きた当時のことや、ではどのように復興したのか、ということを、展示や映像を交えて紹介しており、津波の恐ろしさはもちろん、復興に関する心構えまで学べる施設だった。
一番印象に残っているのが、津波が起きてすぐ復興に動いた人達の動向。武勇伝のように語られるエピソードだったけれど、それを起こしている人も間違いなく人だ、ということが、改めて分かった。私が実際このような状況に陥ったとして、この人たちのように動けるかどうか……。一人でも多くの命を救うために、全員が協力しなければならないと感じた。

その後は、サイクリングのガイドの資格も持っているふるさと村の方にガイドしていただいて、陸前高田をサイクリング!まずは奇跡の一本松へ。

高田松原の松原の由来は、書いて字のごとく、元々松原だったから。しかしその松が津波ですべて流され……生き残ったのが奇跡の一本松だった。松の奥に見えている、当時も使われていなかったユースホステル跡が松を守ったのか。遠くから見ても異質な高い松。当時は高さについても言及されず、なりを潜めていたらしい。

堤防の上から海を臨む。松原が植えられている

現在、かつての松原に戻すために、松を植えている途中。まだまだ時間はかかりそうだが、ぜひ高田松原に寄った際には、松原の様子を見に来たい。

避難場所までの看板

サイクリングしていると、稀によく見るこちらの看板。「Ⅱ-9」と書いてある。この英数字が1に向かうにつれて、どんどんと高度が高くなっていく、という看板だ。ローマ数字のⅡを追い求めていけば、どんどん高い場所に避難できる。地震が起きて津波が来る、という混乱のさなかで、これを追い求めていけばとりあえず高いところへは行けるというのは、精神が安定しそうだ。

震災遺構/旧気仙中学校

校舎の屋上に、なにか看板があるのが見えるだろうか。茶色の看板、あれは津波到達地点である。つまるところ、この校舎はまるまる津波に呑まれたのだ。生徒は全員山の方に逃れ、無事だった。
私は神戸出身で、高校が海の近くにあった。毎日楽しく、しかし地震が来たら終わるなあ、と言いながら通っていた学生時代を思い出し、他人事ではないな、と感じた。

港。ウミネコがたくさん立っていた。

ホタテなどが獲れる港。コンテナの中にはめいっぱいのホタテが詰まっていて、これがあの丼になって食べられるのだなあと思うと、感謝が止まらない。それに、この土地はほんとうに海の幸に恵まれているのだと強く思った。

ウミネコの住処。
産卵の季節には近づいただけでも攻撃的になるらしい。

急に出てくる木々。
像では分かりにくいが、糸が巻かれている。


海を離れて、坂を登る。岩手はリアス式海岸で有名だが、そのギザギザは地形にも反映される。つまるところ、アップダウンが激しいのだ。登っては下り、登っては下り。その傾斜が、サイクリングしているととても楽しい!
その坂の中腹あたり、ピンク色の糸が巻き付いている樹があった。

この樹が植えられている地点が、東日本大震災における津波到達地点だそうだ。現在、この桜を津波到達地点に沿って植えていくプロジェクトが進行中とのこと。これが終われば、かつて津波が来た地点が一発で分かり、うつくしさと共に防災意識を枯れさせずに伝えていくことができる。まだまだ桜は植えられている途中だそうだが、いつか完成したころにまた見に来たい、と思った。

さて、サイクリングもそろそろ最終場面。
ここでひとつ問題。画面中央やや右に、ぽつんと立っている白い壁みたいなもの。あれはなんでしょう。
しんきんぐたいむ。

正解は、「復興時に使われたベルトコンベヤーの土台」でした!
あれを一個撤去するだけでも何万円もかかるのだとか。ただ、ベルトコンベヤーがあったおかげで、土の運搬などが早く進み、より早い復興への足掛かりになったのだと言う。
神戸出身の自分にとって、震災後の復興とは、震災への備えを忘れず、慎重に、しかし迅速に行われるものだと思っていた。神戸は1995年に阪神淡路大震災に遭い、甚大な被害を受けた地域。しかし、復興は恐ろしいほど早かったのだ。気づけばビルなどが立ち並び、電車やバスが通り、今では海沿いにビルや施設、学校が立ち並ぶ街となった。(当然、当時の人たちの努力は忘れてはならない)
しかし、こうして、自然に、ゆっくりと、しかし着実に行われる復興は、今の時代には「遅い!」と言われるかもしれないが、そう一言で非難できない効果を持っている、と感じる。この街は着実に年を重ね、徐々にあの頃へ戻りつつある。けれど、戻れないところもあって、新しいものもあって、そうした新陳代謝のようなものが、たしかに行われているのだ。再生し、成長しつつあるこの街は、ゆるやかに時が流れ、自然と、常に、未来へと歩いていっている。

陸前高田発酵パーク「CAMOCY」

最後の目的地はここ!発酵をテーマにした食のテーマパークだ。心は満たされていても身体は相応に疲れていて、ここのベーカリーMAaLoのレモンのパンとミルクコーヒーを飲むと、さっぱりして身体が喜んでいるのを感じた。(ちなみに、サイクリングコースのリクエストを聞かれた時に、「甘いものが食べたいです!」と言ったので連れてきていただいた所だ!)

ここにはほかにも、チョコレートやお酒を扱っており、オシャレな雰囲気で、また来たいと思った。

私の相棒!

サイクリングはこんな調子で終わりを告げた。実はガイドされながらのサイクリングは初だったのだけれども、ガイドの有る旅は面白いなあ、と気付かされた。
私の趣味は一人旅なのだが、今回のベルトコンベヤーや桜など、自分では確実に気づけなかったものに出会えたことが印象的だった。そして、日常の中に震災への意識が潜んでいるのが良いな、と思った。どうしても意識が暗くなりがちな災害対策を、できる限りやわらかな形で伝えていっている、というところが、豊かな大地と共存せざるを得ない岩手だからこその対策である、と思った。

2025/08/14

滞在5日目

ふるさと村入口と相棒

前々から少しずつ愛着が湧いていた自転車ちゃんだけれども、昨日のサイクリングでさらに愛着マシマシになったので写真を撮りました。自分でも単純だなあって、思います。(この日からこの子のあだ名が私の中で「くろまめ」に決まりました)

ふるさと村ビジターセンター「風樹舎」。
ようこそふるさと村へ!

かき氷ラインナップと綺麗な空!

今日はこびるの家で一日働くことに。普段は時間がかかるために少ししかオーダーを通せないかき氷も、私がホールに居ることでじゃんじゃん出せるそうで、気合いをいれて売っていくことに。お盆休みも中頃でちょうどいい感じ、今日はすがすがしい晴天!さあがんばるぞ!

「あついあつい!」と言いながら入って来るお客さんは、かき氷の文字を見ると救われたようにかき氷ある!と目を輝かせて店内へ。味を決める瞬間もとっても楽しそうで、私も嬉しくなってくる。ふるさと村は、ビジターセンターには「ばあば」という飲食店があるものの、中に入ってしまうと飲食できるところはこびるの家だけ。ちょうど折り返し地点くらいにあることから、休憩がてら入って来る人も多い。そんな人たちにくつろいでいただくため、そして来てよかったと思っていただけるため、できる限り丁寧に接客をする。ああ、接客のバイトしていてよかった……と思う。
 「おいしかったです!」というお声をいただくことも多く、そんな時はウキウキで店主に報告しに行く。その一言がとっても嬉しいので、いっぱい言ってほしい。(毎回店主がとっても嬉しそうにするので、私も嬉しくなった)

ふるさと村の雰囲気を壊さないような、ゆったりした接客を心掛けました♪

お昼のピークが過ぎると、私もお昼ご飯。店主に作っていただくまかないは毎回おいしくてたまらなくなる。今日はこちら!
こびるの家で提供しているカレー二種類のあいがけ!おいしそうすぎる!
色の濃い方が「ポークジンジャーカレー」。三陸ジンジャーと野菜をベースに、「ありすポーク」がたっぷり入っているカレー。こちらはコクのある味わいで、口に運ぶたびに深みが増す逸品。ポークもとろっとろで満足感がある。とにかく、深く、濃く、しょうがが聞いていておいしい!辛さはそこまで感じないが、大人っぽい、くせになるビターなお味。

そしてもう一つが「ほろほろチキンと豆のカレー」。岩手のブランド鶏「南部どり」を塩鞠で付け込んで柔らかくしたものを使用。豆も入った優しい風味のカレー。ポークに比べて全年代にウケるだろう柔らかいお味で、鶏もほろっと口の中で崩れて最高!豆がアクセントになり、柔らかい味わいながら、嫌みの無い深さがあり、マイルドにこだわりを感じられるカレー。
なにより店主のこだわりがふんだんに詰まった、ここでしか食べられないカレーなので、ぜひぜひ食べてみていただきたい!!

仕事が終わって、たかむろ水光園でごはんを食べる。こちらはたかむろ水光園食堂のメニューである、ジンギスカン定食。
バケツジンギスカンを食したあの日から、ジンギスカンがおいしすぎることに気づき、もう一度、岩手を出るまでにぜったいに食べたい……!と決意。……単純思考?
ジンギスカンはさながら、タレがとてもとてもおいしく、ジンギスカン本体の甘さとクセに、甘だれがヒット。おいしすぎる。というかやっぱりジンギスカンの味がたまらなすぎる。もう一度岩手に来たい理由は山ほどあるけれど、一番はもう一度ジンギスカンを食べたいからかもしれません。私は食欲に勝てない。
ジンギスカン定食は、ひっつみ汁もついてくるよ。

2025/08/15

滞在6日目

今日もこびるの家での業務。ドリンクも多少はお手伝いできるようになってきて、ミスもだんだん減ってきた。かき氷もよく売れる!
ちなみに私が入っている期間中の売れ筋は、圧倒的にかき氷だったのだけれど、ドリンクの中だと神っ童ラムネというラムネがよく出た。かみっこラムネ、と読むこのラムネ。イチゴ味の「赤い河童」、ラムネ味の「冷たい雪女」、ブルーハワイ味の「青い座敷童子」があって、それぞれの色に対応した色がついている。日光に照らすととても綺麗で、どれにしようかあ、と悩むお客さんも多い。風味を言ったり、色と妖怪が対応していると言ったり……説明もできるようになってくる。だんだんお客さんとコミュニケーションをとれるようにもなってきた。

遠野を舞台にした作品はたくさんあるが、私なんかは「東方Project」を思い浮かべる。キャラクターの一人にマヨヒガを住処にしているキャラクターが居ることや、そもそもコンテンツ自体に妖怪の要素がふんだんに盛り込まれていることから、ここ遠野の地は聖地のひとつになっている。ふるさと村にはマヨヒガの森もあるから、そこを見ていく人も多い。
この日は近くで東方Project関連のイベントがあったようで、そのキャラクターをあしらったTシャツを着たお客様がいらっしゃった。その方に「可愛いですね」「マヨヒガもあるんで、ぜひ見てってください」と話すと、けっこう楽しんでくださったようで、私も嬉しかった。
通常、私が住む京都や地元兵庫の飲食店でコミュニケーションを交わす機会はめったにないが、このお店はゆるやかな雰囲気が漂っていて、自然と交流もしやすい。珍しい木製のゲームや射的なんかでも遊べて、ほんとうにふるさとのような雰囲気が漂っている。

ときに私はオタクなのだが、この施設は……「ぬい撮り」に最適です。
とはいえ一週間分の荷物を詰め込んだスーツケースに推しぬいが入っているはずもなく。私が持ち込んだぬいは……
ふつうにイヤホン入れとして活躍してくれていたワドちゃん(星のカービィのワドルディのポーチ)、連れてきてよかったー!さっそくぬい撮り……。

施設自体が広いふるさと村。人もあちらこちらに散らばっていて、家ごとの滞在人数で言えば、自分のほかに一組いるかどうかくらい。
つまり、自分の納得できる構図で撮り放題というわけだ。外だとこんなこともできちゃう。


ふるさと村に潜むワドちゃん

ワドルディをさがせ!

ワドちゃんを置いて→ざーっと後ろに下がって→撮って→ワドちゃんを回収する、ここまで周囲に人はゼロ。心ゆくまでぬい撮りができる。
コスプレなんかもふるさと村の方は歓迎しているようなので、私と同じようにオタク趣味を持つ人はぜひ一度訪れることを検討してほしい。
(ちなみにワドルディは積まれている薪の一番右上に鎮座していました)

今日はバイトしながらいわて旅に参加している方との交流会がある。その前に、一度道の駅遠野風の丘に寄ってお土産を買うために、自転車をかっとばす。
遠野はどこを走っていても、「これは……!」と思うような景色がある。空がひろく、緑が遠くまで続いていて、家の生活感があって。遠くに山が見えて、雲が見えて。ぱあっと開けた景色は、自転車で走っていると気持ちいい。

道の駅遠野風の丘のプログラムに参加している方とお会いした。まったく違う業務内容で、得られるイメージもずいぶん違いそうだなあ、と思った。その方は私とは違い、さらに長期で遠野に滞在されていたので、休日も多く、より多くの場所を巡ることができたそうだ。次遠野に来るときには、もう少し日数を伸ばしたい……体験談を聞いて、そう思った。そして、次参加できるときには道の駅遠野風の丘に行ってみようかな、とも。どちらにせよ、選んだことに後悔はしなさそうだ。

2025/08/16

滞在最終日

今日は朝からわらじ作り体験があったので、それの見学から始まった。
定期的に開かれているようで、和やかな雰囲気でわらじが作られていく。わらじになる前のわらは当然ながらただの一本のわらで、ここから靴になる、というのだから本当に不思議だ。

地域の人を中心に集まっているようで、顔見知りの参加者も多い。遠野に長期間で旅行に来ていて、何回か参加した、という人も、自然と人々の輪に入って作りあげていく。どうすればよいのか聞いたらふるさと村の人がぱっと教えてくださって、そうでなければ自分でもくもくと、あるいは周囲の人と談笑しながら、あみあみあみ……。
これ難しいわあ、と言いながら編んでいくと、いつの間にか、できたあ! と声が上がっていた。とにかく和やかで、緩やかに、しかし早く時間が過ぎていて、そんな時間が経ったのか、と驚いた。

ここから最終調整に入るらしいが、ここで午前の時間がタイムアップ!お昼休憩をとってもう一度午後からやるらしい。
私も午後からはこびるの家での業務があったので、それを伝えて別れようとすると、参加者の方から「上ではごはんも出しているんですか?」とご質問。前に書いたカレーのことを、「深いコクのあるポークジンジャーカレーと、やわらかいチキンと豆が入ったやさしいお味のチキンカレーがあります!」と、すごくおいしいです! ということをアピールしつつ言ってみた。普段はこびるの家にあるカレーの説明が書かれたラミネートをカンニングしながら説明していたから、何も見ずに説明ができるようになったのか!と感動する。

最終のこびるの家では、土曜ということもあったのか、まあまあな客入り。それでも初日と比べたら明らかにできることの幅が広がっていて、作業効率も格段にあがっている。今日で終わりなのが口惜しいなあ、と思いつつ、お盆期間だからこその客入りだと聞かされていたので、普段は一人で回るんだろうなあ、とも思う。
改めてメニュー表を見ながら、次来訪したら、私なら何を食べようかなあ、と思う。夏であれば、確実にかき氷なのだけれど、夏でなければゆべしを食べたいかもしれない。でもチーズケーキも食べたいから、お昼時に来るかも。でもお昼時に来るならカレーを食べたいし……。ううん、迷う。リンゴジュースも大船渡のリンゴを使用していておいしかったし……。もう次の私に託そう。……やっぱりかき氷食べたいから、夏の私に。

少しだけビジターセンターでの受付作業もした。
なんと今日は、ふるさと村の説明も、ぎこちないながらできるようになった。入村券をお渡しした際に軽く説明をするのだが、それができるようになっていて、最終までにできるようになってよかった、と思う。最終日だからこその口惜しさはもちろんあるが、最終日だからこそ、嬉しかった。
物販の接客も入村券のお渡しも、鯉の餌をつめるのも、ある程度できるようになって、ああ、今日で終わりなのかあ……と考える。業務的にはチュートリアルを終えたくらいの段階で、もどかしい。絶対にまた、今度はお客さんとして来よう!と感じた。旅は多少の未練が残っていた方が良い。
(ときに、ふるさと村はさまざまなロケ地に使用されているんですよ。)

五時になって、退勤する。
そこに居るスタッフの方全員にお礼を言っていると、お土産を持たせていただいた!風呂敷と梅酒とジビエの缶詰!ぜったいに大切に使いますし、大切に食べます!

ふるさと村の方に送っていただいて、気づけば遠野駅。帰る時間だ。
また「ようこそ」と言ってもらえる、その日のために、京都に帰ろう。
旅とはそういうものなのだ。

少しだけ、その土地に未練を残してお家に帰る。そうすると、その土地のことを覚えていられる。人間は哀しいことに、嬉しい記憶よりも、もやもやっとした記憶の方が残りやすい。だからこそ、もやもやっ、を一割残して、それに紐づけて楽しかったを背負って帰る。たぶん、それが一番いい。

帰り道は夜行バスからの昼行バスで、一日くらいバスに乗っていたと思うのですが、みなさんは大人しくどっちか新幹線使った方がいいですよっ!

ただいま、京都!
そしてまたいつか、ふるさとに帰れる日まで。

ありがとう、遠野!

お問合せ

バイトしながらいわて旅事務局

電話でお問合せ平日10時〜18時

019-621-1171

ACCESS

〒020-0024
岩手県盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル5階

※無料駐車場・指定駐車場はございません。
公共交通機関をご利用いただくか、お車でお越しの際は、お近くの有料駐車場をご利用ください。

[バス]
・「映画館通り」徒歩1分
・「菜園川徳前」徒歩2分

※盛岡駅からのアクセスには「盛岡都心循環バス でんでんむし 左回り」の「菜園川徳前」が便利です

[徒歩] 盛岡駅より15分

[タクシー] 盛岡駅より5分

  • 写真:ビル外見
  • 写真:ビル正面
  • 写真:1階
  • 写真:5階
  • 写真:ビル内装